
書道の書体
書道の書体には楷書(かいしょ)、行書(ぎょうしょ)、草書(そうしょ)、隷書(れいしょ)、篆書(てんしょ)の5つの書体があります。漢字のもととなる甲骨文字は今から100年ほど前に発見されました。中国殷帝国でおよそ3000年前に亀の甲羅や牛の骨に刻まれたもので、占いの記録に使われたと言われます。絵で情報のやり取りをする中で生まれたため、初期の文字である象形文字・甲骨文字などは複雑な形をしていました。
甲骨文字が時代を経て簡略化され5つの書体が生まれました。漢字は情報の伝達だけではなく見せる文字の芸術として書道が生まれました。ここでは書道の5つの書体についてご説明いたします。
篆書(てんしょ)
隷書が発生するまでの甲骨文・金文・小篆までの古代文字の書体すべてを広義の篆書と言います。小篆は秦の始皇帝により定められたと言われ公文書に使用された文字で狭義の篆書といわれます。書道で篆書といえば小篆のことを指します。
。現在も篆書で彫られた印鑑を篆刻(てんこく)と言い絵や書などの作者のサインとして用いられ実印にも小篆が用いられます。日本で確認された最も古い文字は篆書体で、古墳(弥生時代)から発見された銅貨の貨泉という文字が記されていました。
隷書(れいしょ)
秦の時代が滅び漢の時代になると篆書を読みやすく簡略化し生まれた書体の隷書が篆書にかわり正書体として一般に使用されました。小篆の流れから発生した古隷が典礼用に装飾され生まれた文字と言われています。
隷書は後にさらに速書できるよう省略された草書、行書と、きれいな形で簡略化された楷書へと進化します。隷書は別名八分(はっぷん)と言われます。
草書(そうしょ)
草書は篆書・隷書をさらに簡略化した文字で後漢の時代に張芝(ちょうし)が創ったと言われています.点画を省略、簡略化し独特の崩し方で形に定まりがなく楷書、行書に比べるとまったく違う形をしています。
草書は現在一般的に使われることはなく専門の学習をしなければ読める文字ではありませんが特有の芸術的な文字です。日本で楷書体の万葉仮名を草書体で書いたものを草仮名(そうがな)と言います。
行書(ぎょうしょ)
後漢の時代に生まれた隷書の点画を省略し続けて書いた文字で崩し字とも言われ崩し方、筆の流れに美しさがある文字です。崩し方、点画の省略のしかたに一定の決まりがあり、抑揚をつけて文字と文字を流れるように連続して書きます。
文字と文字の間はつなげても離してもよく決まりはありません。楷書によく似た今日まで一般的に書かれている文字で書道を習う人にも人気がある書体です。
楷書(かいしょ)
楷書は後漢の時代に発生し三国時代に完成したとされています。草書を読みやすく一点一画を崩さずにきちんと書いた書体です。崩さずに書かれた文字ですが、隷書よりは字画が少ないため速く書くことができるきれいな形をした均整のとれた文字です。
楷書が誕生してから今日まで長い間正式書体として使われています。日本では明治時代に学校の書道教育の基準が楷書に定められました。